慢性リンパ性白血病(CLL)の
最初の薬物療法

慢性リンパ性白血病(CLL)は、患者さんの状態に合わせて治療が決められます。薬物療法で用いられる治療薬には、代謝拮抗薬やアルキル化剤(マスタード類)などの化学療法薬、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤や抗CD20モノクローナル抗体などの分子標的薬があります。このページでは、治療の内容を決めるフロー、および最初の薬物療法で用いられる薬剤の特徴についてご紹介します。

最初の薬物療法で用いられる薬剤1)

CLLの最初の薬物療法では、以下に示す薬剤が使われます。

薬効分類 特徴
化学療法 代謝拮抗薬 CLL細胞の増殖の鍵となる遺伝子などに作用して、CLL細胞を攻撃する
アルキル化剤(マスタード類)
分子標的治療薬 ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤 B細胞の増殖にかかわる信号を出すBTKという物質に作用して、CLL細胞が増えるのを抑制する
抗CD20モノクローナル抗体 薬剤である抗体がCLL細胞の表面にある特定のマーク(CD20)にくっつくと、免疫細胞などが、がん細胞を攻撃する(免疫療法)

薬剤を組み合わせて使う併用療法

併用療法は、作用する場所が異なる複数の薬剤でがん細胞を攻撃することを目的にしています。
併用療法には様々な種類があり、上記の化学療法、免疫療法、BTK阻害剤などを併用する選択肢もあります。

化学免疫療法

近年、分子標的薬も使用できるようになり、標準治療も変化してきていますので、治療の選択にあたっては、ご自身の希望も含めて主治医とよく相談してください。

高齢のがん患者さんにおける治療

高齢のがん患者さんの治療では、主治医は患者さんが想定される治療に耐えて、回復し健康を取り戻すことが可能かを判断します。そのため、患者さんの身体状況、検査所見、理解能力、精神状態、家庭環境などを参考に、治療による利益(手術・薬剤の効果)とリスク(副作用・後遺症による生活の質の悪化など)を考慮のうえ、治療方針が検討されます2,3)
治療によるリスクを評価するために、身体機能(fitness)、臓器機能、認知機能、合併症の有無なども確認されます2,3)

身体機能は、標準的な治療を受けられる状態(fit)、標準的な治療を受けることが難しい状態(unfit)、身体が弱っていていずれの治療にも耐えることが困難な状態(frail)に区別されます4)
身体機能は、日常生活を送るために最低限必要な日常生活動作(着替え、食事、移動(歩行)、トイレ、風呂など)、やや複雑な手段的日常生活動作(買い物、食事の準備、お薬の管理、金銭管理など)、そして認知機能(ご自身の年齢やその日の日付、今いる場所、計算などの質問への回答)などで評価されます5,6)

日常生活動作の例、歩行 食事
  • 1) 日本血液学会編: 造血器腫瘍診療ガイドライン 2023年版. 金原出版, 2023, pp.153-154
  • 2) 日本臨床腫瘍学会・日本癌治療学会編: 高齢者のがん薬物療法ガイドライン. 南江堂, 2019, pp.2-5
  • 3) 日本がんサポーティブケア学会編: 高齢者がん医療Q&A 総論. 2020, p17-20
  • 4) 山内芳也ほか: 外科と代謝・栄養. 2018; 52(1): 17-22.
  • 5) 日本老年医学会Webサイト: 高齢者診療におけるお役立ちツール 2.認知機能の評価法と認知症の診断
    https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/tool/tool_02.html [2024年1月29日アクセス]
  • 6) 日本老年医学会Webサイト: 高齢者診療におけるお役立ちツール 3.ADLの評価法
    https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/tool/tool_03.html [2024年1月29日アクセス]

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